ガキの頃、短パンの頃、
ランディがホームランを放つと
自然と小さな日本人どもが奴の放物線を描く
太鼓腹に吸い寄せられて
そいつは、――ステレオティピカルでいて
むしろトロピカルな
猿みたいな東洋観の残像だったんだが、――
無邪気さすら叩き込むランディの
シェーヴィング・ローションの香りで
おれが実際に使いだしたのは、一人暮らし
始めて、淋しさを学び始めたころ
ランディはなぜかオクラホマ州上院議員になっていた
そいつも退屈な事だろうか、諸君?
不思議なものだ、諸君!
そういやあのインディアン、長い髭を生やしてた
海の向こうの丘に電話する
そんなことに逡巡していた
5月のアスファルトの季節
だったら一人で生き抜いて
やるとおれは息抜きながら
そこには誰もいないことに
暴食しながら全ての歩行者
が流れ去って今その裾野の
灌木群に絡まって絡まって
一人で生きるのは多大なる
観察者達を要するのだから
ああ、分からない、今度は
それは一人で生きることで
ない事、なあ丘の真ん中で
了解されて、ああ、今度は
短距離電話か短距離糸電話
海はゆっくりと一滴の何か
短い髭に絡まった塩が香る
鶏をマウンドに立てると
ボールを投げてくる代わりに
卵を産みやがる
転がる無数の卵が政治屋たちの
足をとる
とても滑稽なのである
ラジオ中継はないのかい、ハニー?
だとよ!
そうしてランディ・バースは合衆国次期大統領候補第51位となった
とりもなおさず1番ということである
なあ、どうだい、卵生まれのチンギスハン?
アラバマのインディアン・マウンドでは
勇猛果敢なインディアンの亡霊に
蒙古斑の痕跡が認められないか、その証拠探しに
学者達が躍起になっている
どいつもそろって蒙古斑を見たことがないから
モンゴルからおふざけ力士を呼び寄せた
おけつをペローンと
おけつをペローンと
むいて、殻でマウンドを補強した
勇猛残虐な蒙古人に短距離電話など必要ないさと
おれは泣きながら電話を自身の蒙古斑に乗せる
そいつは蒙古人たちが走破した距離に
充当したお荷物だからなんだ、おれは大平原に女の影を探す
親父は交通事故で死んだ、時速200キロで
悲しいのはそのことを悲しむスペースが
おれに1キロもないことだ
ランディの難病を抱えた息子は
どうなったんだろう?
おれは決して会うことのない彼の幸福を
願ってやまない
おれは海のこっち側にいる
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